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漢方耳寄り講座


 3月に発生いたしました東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
被災地の一日もはやい復興を心よりお祈りいたします。

 前々回、甘草という生薬をご紹介いたしましたが、その甘草と同じくたくさんの漢方処方に使われる茯苓(ブクリョウ)という生薬をご紹介いたします。
茯苓は、甘草よりもずっとマイナーであまり耳慣れない生薬かと思いますが、日本にある約210種類の漢方薬の1/3、約70処方に使用されている、使用頻度の高い生薬のひとつです。
茯苓の正体は、葉っぱでも木の皮でもなく、サルノコシカケ科のキノコです。
体を温めるわけでも冷やすわけでもない「平性」で、味は特に特徴のない「淡」。やや甘味があります。
おもな働きは(1)利水・利尿作用 (2)健脾・健胃作用 (3)安神・リラックス作用 とされています。
このように多方面の効能を持っていますので、八味地黄丸、安中散加茯苓、桂枝茯苓丸などそれぞれ効能が異なる処方に必要とされる器用な助っ人のような生薬といえます。

生薬ときくと、朝鮮人参や冬虫夏草のように薬効が高く高価な生薬を思い浮かべがちですが、甘草や茯苓のように、派手さはないけれどもどの処方でもうまくやれる器用な存在は、チーププレイを重視する漢方処方のなかではとっても重宝されます。

 余談ですが、北京の名物菓子として「茯苓挟餅」というのがあります。日本の最中を薄くしたようなお菓子で、茯苓を粉末にしたものが入っているようです。
日本では茯苓は「医薬品」になるためこのようなお菓子は存在しませんが、いかにも医食同源の中国らしいお菓子といえます。

担当:川村

いったん本連載はお休みさせていただきます。

漢方耳より講座 バックナンバー
第22回  一人3役!? 器用な生薬 茯苓(ブクリョウ)
第21回 中国の漢方薬処方
第20回 生薬のまとめ役、甘草
第19回 読書に欠かせない肝のはたらき
第18回 夏の「三伏」と根本治療
第17回 とっても大事な「脾」について
第16回 「陰陽」のバランスがいい? 四川火鍋
第15回 「風邪=ふうじゃ」について。その2
第14回 「風邪=ふうじゃ」について
第13回 漢方胃腸薬の香りの秘密
第12回 葛根湯と汗の関係
第11回 秋の行楽と尿トラブル 2009年10月号
第10回 よく聞く実、虚って? 2009年9月号
第9回 バリア機能「気」 2009年8月号
第8回 夏に消耗する「気」 2009年7月号
第7回 夏に気になるダイエット 2009年6月号
第6回 体内の湿気をふせぐには 2009年5月号
第5回 生薬って植物だけなの?2009年4月号
第4回 せきに効く、麻杏甘石湯! 2009年3月号
第3回 漢方薬は効き目が遅い?2009年2月号
第2回 ムズムズ不快な鼻水に小青竜湯!2009年1月号
第1回 この季節ぴったりの、体を温めるかぜ薬! 2008年12月号