漢方耳より講座 第10回 よく聞く実、虚って?
漢方の世界では、普段あまり使わない言葉をよく使います。
近頃雑誌などでよく漢方特集が組まれていますが、よく登場する「実(じつ)」と「虚(きょ)」もそのうちのひとつ。
これは、身体や病気の状態をあらわすことばで、「実」は体力や病気の勢いが盛んな状態、「虚」は逆に体力が衰えていて、症状も激しくないものを指します。
一般的に病気の状態を指す言葉ですので、体力が有り余って元気いっぱいの人(病気ではない人)のことを「実」とはいいません。
この実と虚ですが、漢方薬を使う上でとっても重要な要素になります。
たとえば、同じ食欲不振でも、食べ過ぎてもうなにも食べたくない状態(=実)なのか、それとも病み上がりで食欲がない状態(=虚)なのかで、それぞれ使う薬も違ってくるからです。
これは極端な例でしたが、かぜ薬も実と虚で使う薬が違ってきます。
たとえば、お馴染みの葛根湯や、インフルエンザ関連で注目されている麻黄湯などは、体力もあり、症状も比較的強めに出る「実」向けの漢方薬です。ともに発汗作用が強いため、体力が極端に低下した「虚」の人が服用すると、発汗作用により余計に体力が消耗し、かぜの直りが悪くなるということもあります。
症状もさほど強くはでないけど、体力もないような「虚」の状態のかぜには、桂枝湯や柴胡桂枝湯などのかぜ薬をよく使います。これらは発汗作用がマイルドなのが特徴です。
漢方薬の添付文書には「実」や「虚」という単語は使われませんが、「体力中等度」や「体力虚弱」など、それにかわる言葉で説明されるようになってきています。
症状だけでなく、「実」か「虚」かで自分にぴったりの漢方薬を選ぶことが、漢方を上手に使うコツといえます。
担当:川村
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