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漢方耳寄り講座 第13回 漢方胃腸薬の香りの秘密


  年末年始は、ついつい食べ過ぎて胃に負担をかけてしまう季節です。
 胃がもたれてなんとなく食欲がない、なんていう経験はどなたでもあると思いますが、それが長期化して「慢性胃炎」のときに使われるのが漢方胃腸薬「安中散」です。
 この安中散、その名の通り、中(=からだの真ん中、消化機能)を安心させる働きがある有名な漢方薬です。
 一度でも服用されたことのある方なら分かると思いますが、この安中散にはスーッとするような独特の香りがあります。おもな香りの成分はケイヒやウイキョウなどの生薬のものですが、実はこの香りに「芳香開胃作用」、つまり、かぐだけで食欲を増進させる働きがあると考えられています。
 漢方で食欲不振に使われる生薬の多くは、このように香りを発散させるような性質を持っています。ふわっと香りが広がるため、性質が軽めで、煮出す「湯剤」ではなく、安中散のような「散剤」として用いられることが多いといえます。
 もちろん、嗅いだだけでいきなり食欲がでてきてもたれが解消されるということはありませんが、漢方ではこの香りも効き目の重要な一部と考えられています。
 この年末年始、もし服用される機会がありましたら、この香りにも注目してみてください。

 
担当:川村

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