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漢方耳寄り講座 第20回 生薬のまとめ役、甘草


  四川鍋

   現在日本で認められている漢方薬は全部で210種類以上ありますが、そのなかでもっとも出番が多いのが「甘草」という生薬で、半分以上の漢方薬で使われています。その名の通り生薬のなかでは珍しく?甘味が強いのが特徴です。
 甘草の漢方での働きは、気を補う、胃をいたわる、解熱解毒、せきどめ、痛み止めなど多岐にわたりますが、一番の特徴は「諸薬を調和する」という働きにあります。
 通常漢方薬は数種類の生薬を組み合わせて作りますが、それぞれ個性の強い生薬同士、単に一緒に鍋に入れて煮込んでもなかなかうまくひとつに調和してくれません。たとえば、「熱」の性質をもつ生薬と、「寒」の性質をもつ生薬を一緒に配合したとき、お風呂のお湯をまぜるように、簡単に「適温」という具合にはなりません。「熱」「寒」がバラバラに力を発揮し、本来の効き目はもとより、体に負担を掛けるだけです。
 こういうときに甘草の出番がやってきます。
 性質の違う複数の生薬と一緒になることで、甘草がそれぞれの過激な性質をまろやかにし、体に負担をかけにくくし、より効果が発揮されやすいように「調和」します。甘草そのものの「気を補う」などの効果を期待するよりも、こうして「調和」目的で配合されることがほとんどといえます。

 このようにまとめ上手な甘草はいろいろな漢方処方に配合されていますが、ひとつ気をつけたいのが、ひとによってむくみや高血圧などを起こす副作用があるということです。
ほとんどの漢方薬に配合されているゆえに、複数の漢方薬を自己判断で服用すると、甘草の摂取量が多くなってしまうことがあります。
こうした事態を避けるためにも、ぜひ漢方薬は専門家のアドバイスのもとで正しく購入し服用してください。

担当:川村

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